教育公務員特例法

  平成19年6月27日改正(法律98)

第1章 総則

第1条(この法律の趣旨)
この法律は、教育を通じて国民全体に奉仕する教育公務員の職務とその責任の特殊性に基づき、教育公務員の任免、給与、分限、懲戒、服務及び研修等について規定する。

第2条(定義)
この法律で「教育公務員」とは、地方公務員のうち、学校教育法 (昭和二十二年法律第二十六号)第一条 に定める学校であつて同法第二条 に定める公立学校(地方独立行政法人法 (平成十五年法律第百十八号)第六十八条第一項 に規定する公立大学法人が設置する大学及び高等専門学校を除く。以下同じ。)の学長、校長(園長を含む。以下同じ。)、教員及び部局長並びに教育委員会の教育長及び専門的教育職員をいう。
2  この法律で「教員」とは、前項の学校の教授、准教授、助教、副校長(副園長を含む。以下同じ。)、教頭、主幹教諭、指導教諭、教諭、助教諭、養護教諭、養護助教諭、栄養教諭及び講師(常時勤務の者及び地方公務員法 (昭和二十五年法律第二百六十一号)第二十八条の五第一項 に規定する短時間勤務の職を占める者に限る。第二十三条第二項を除き、以下同じ。)をいう。
3  この法律で「部局長」とは、大学(公立学校であるものに限る。第二十六条第一項を除き、以下同じ。)の副学長、学部長その他政令で指定する部局の長をいう。
4  この法律で「評議会」とは、大学に置かれる会議であつて当該大学を設置する地方公共団体の定めるところにより学長、学部長その他の者で構成するものをいう。
5  この法律で「専門的教育職員」とは、指導主事及び社会教育主事をいう。

第2章 任免、給与、分限及び懲戒

第1節 大学の学長、教員及び部局長

第3条(採用及び昇任の方法)
学長及び部局長の採用並びに教員の採用及び昇任は、選考によるものとする。
2  学長の採用のための選考は、人格が高潔で、学識が優れ、かつ、教育行政に関し識見を有する者について、評議会(評議会を置かない大学にあつては、教授会。以下同じ。)の議に基づき学長の定める基準により、評議会が行う。
3  学部長の採用のための選考は、当該学部の教授会の議に基づき、学長が行う。
4  学部長以外の部局長の採用のための選考は、評議会の議に基づき学長の定める基準により、学長が行う。
5  教員の採用及び昇任のための選考は、評議会の議に基づき学長の定める基準により、教授会の議に基づき学長が行う。
6  前項の選考について教授会が審議する場合において、その教授会が置かれる組織の長は、当該大学の教員人事の方針を踏まえ、その選考に関し、教授会に対して意見を述べることができる。

第4条(転任)
学長、教員及び部局長は、学長及び教員にあつては評議会、部局長にあつては学長の審査の結果によるのでなければ、その意に反して転任されることはない。
2  評議会及び学長は、前項の審査を行うに当たつては、その者に対し、審査の事由を記載した説明書を交付しなければならない。
3  評議会及び学長は、審査を受ける者が前項の説明書を受領した後十四日以内に請求した場合には、その者に対し、口頭又は書面で陳述する機会を与えなければならない。
4  評議会及び学長は、第一項の審査を行う場合において必要があると認めるときは、参考人の出頭を求め、又はその意見を徴することができる。
5  前三項に規定するもののほか、第一項の審査に関し必要な事項は、学長及び教員にあつては評議会、部局長にあつては学長が定める。

第5条(降任及び免職)
学長、教員及び部局長は、学長及び教員にあつては評議会、部局長にあつては学長の審査の結果によるのでなければ、その意に反して免職されることはない。教員の降任についても、また同様とする。
2  前条第二項から第五項までの規定は、前項の審査の場合に準用する。

第6条(休職の期間)
学長、教員及び部局長の休職の期間は、心身の故障のため長期の休養を要する場合の休職においては、個々の場合について、評議会の議に基づき学長が定める。

第7条(任期及び停年)
学長及び部局長の任期については、評議会の議に基づき学長が定める。

第9条(懲戒)
学長、教員及び部局長は、学長及び教員にあつては評議会、部局長にあつては学長の審査の結果によるのでなければ、懲戒処分を受けることはない。
2  第四条第二項から第五項までの規定は、前項の審査の場合に準用する。

第10条(任命権者)
大学の学長、教員及び部局長の任用、免職、休職、復職、退職及び懲戒処分は、学長の申出に基づいて、任命権者が行う。

第2節 大学以外の公立学校の校長及び教員

第11条(採用及び昇任の方法)
公立学校の校長の採用並びに教員の採用及び昇任は、選考によるものとし、その選考は、大学附置の学校にあつては当該大学の学長、大学附置の学校以外の公立学校にあつてはその校長及び教員の任命権者である教育委員会の教育長が行う。

第12条(条件附任用)
公立の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校及び幼稚園の教諭、助教諭及び講師に係る地方公務員法第二十二条第一項 に規定する採用については、同項 中「六月」とあるのは「一年」として同項 の規定を適用する。
2  地方教育行政の組織及び運営に関する法律 (昭和三十一年法律第百六十二号)第四十条 に定める場合のほか、公立の小学校等の校長又は教員で地方公務員法第二十二条第一項 (前項の規定において読み替えて適用する場合を含む。)の規定により正式任用になつている者が、引き続き同一都道府県内の公立の小学校等の校長又は教員に任用された場合には、その任用については、同条同項の規定は適用しない。

第13条(校長及び教員の給与)
公立の小学校等の校長及び教員の給与は、これらの者の職務と責任の特殊性に基づき条例で定めるものとする。
2  前項に規定する給与のうち地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)第二百四条第二項 の規定により支給することができる義務教育等教員特別手当は、これらの者のうち次に掲げるものを対象とするものとし、その内容は、条例で定める。
一  公立の小学校、中学校、中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部若しくは中学部に勤務する校長及び教員
二  前号に規定する校長及び教員との権衡上必要があると認められる公立の高等学校、中等教育学校の後期課程、特別支援学校の高等部若しくは幼稚部又は幼稚園に勤務する校長及び教員

第14条(休職の期間及び効果)
公立学校の校長及び教員の休職の期間は、結核性疾患のため長期の休養を要する場合の休職においては、満二年とする。ただし、任命権者は、特に必要があると認めるときは、予算の範囲内において、その休職の期間を満三年まで延長することができる。
2  前項の規定による休職者には、その休職の期間中、給与の全額を支給する。

第3節 教育長及び専門的教育職員

第15条(採用及び昇任の方法)
専門的教育職員の採用及び昇任は、選考によるものとし、その選考は、当該教育委員会の教育長が行う。

第16条(教育長の給与等)
教育長については、地方公務員法第二十二条 から第二十五条 まで(条件附任用及び臨時的任用並びに職階制及び給与、勤務時間その他の勤務条件)の規定は、適用しない。
2  教育長の給与、勤務時間その他の勤務条件については、他の一般職に属する地方公務員とは別個に、当該地方公共団体の条例で定める。

第3章 服務

(兼職及び他の事業等の従事)
第17条
  
教育公務員は、教育に関する他の職を兼ね、又は教育に関する他の事業若しくは事務に従事することが本務の遂行に支障がないと任命権者(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第三十七条第一項 に規定する県費負担教職員については、市町村(特別区を含む。以下同じ。)の教育委員会。第二十三条第二項及び第二十四条第二項において同じ。)において認める場合には、給与を受け、又は受けないで、その職を兼ね、又はその事業若しくは事務に従事することができる。
2  前項の場合においては、地方公務員法第三十八条第二項 の規定により人事委員会が定める許可の基準によることを要しない。

(公立学校の教育公務員の政治的行為の制限)
第18条

公立学校の教育公務員の政治的行為の制限については、当分の間、地方公務員法第三十六条 の規定にかかわらず、国家公務員の例による。
2  前項の規定は、政治的行為の制限に違反した者の処罰につき国家公務員法 (昭和二十二年法律第百二十号)第百十条第一項 の例による趣旨を含むものと解してはならない。

(大学の学長、教員及び部局長の服務)
第19条

大学の学長、教員及び部局長の服務について、地方公務員法第三十条 の根本基準の実施に関し必要な事項は、前条第一項並びに同法第三十一条 から第三十五条 まで、第三十七条及び第三十八条に定めるものを除いては、評議会の議に基づき学長が定める。

(勤務成績の評定)
第20条
  
大学の学長、教員及び部局長の勤務成績の評定及び評定の結果に応じた措置は、学長にあつては評議会、教員及び学部長にあつては教授会の議に基づき学長、学部長以外の部局長にあつては学長が行う。
2  前項の勤務成績の評定は、評議会の議に基づき学長が定める基準により、行わなければならない。

第4章 研修

第21条(研修)
教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。
2  教育公務員の任命権者は、教育公務員の研修について、それに要する施設、研修を奨励するための方途その他研修に関する計画を樹立し、その実施に努めなければならない。

第22条(研修の機会)
教育公務員には、研修を受ける機会が与えられなければならない。
2  教員は、授業に支障のない限り、本属長の承認を受けて、勤務場所を離れて研修を行うことができる。
3  教育公務員は、任命権者の定めるところにより、現職のままで、長期にわたる研修を受けることができる。

第23条(初任者研修)
公立の小学校等の教諭等の任命権者は、当該教諭等(政令で指定する者を除く。)に対して、その採用の日から一年間の教諭の職務の遂行に必要な事項に関する実践的な研修(以下「初任者研修」という。)を実施しなければならない。
2  任命権者は、初任者研修を受ける者(次項において「初任者」という。)の所属する学校の副校長、教頭、主幹教諭(養護又は栄養の指導及び管理をつかさどる主幹教諭を除く。)、指導教諭、教諭又は講師のうちから、指導教員を命じるものとする。
3  指導教員は、初任者に対して教諭の職務の遂行に必要な事項について指導及び助言を行うものとする。

第24条(十年経験者研修)
公立の小学校等の教諭等の任命権者は、当該教諭等に対して、その在職期間(公立学校以外の小学校等の教諭等としての在職期間を含む。)が十年(特別の事情がある場合には、十年を標準として任命権者が定める年数)に達した後相当の期間内に、個々の能力、適性等に応じて、教諭等としての資質の向上を図るために必要な事項に関する研修(以下「十年経験者研修」という。)を実施しなければならない。
2  任命権者は、十年経験者研修を実施するに当たり、十年経験者研修を受ける者の能力、適性等について評価を行い、その結果に基づき、当該者ごとに十年経験者研修に関する計画書を作成しなければならない。
3  第一項に規定する在職期間の計算方法、十年経験者研修を実施する期間その他十年経験者研修の実施に関し必要な事項は、政令で定める。

第25条(研修計画の体系的な樹立)
任命権者が定める初任者研修及び十年経験者研修に関する計画は、教員の経験に応じて実施する体系的な研修の一環をなすものとして樹立されなければならない。

第25条の2(指導改善研修)
公立の小学校等の教諭等の任命権者は、児童、生徒又は幼児(以下「児童等」という。)に対する指導が不適切であると認定した教諭等に対して、その能力、適性等に応じて、当該指導の改善を図るために必要な事項に関する研修(以下「指導改善研修」という。)を実施しなければならない。
2 指導改善研修の期間は、一年を超えてはならない。ただし、特に必要があると認めるときは、任命権者は、指導改善研修を開始した日から引き続き二年を超えない範囲内で、これを延長することができる。
3  任命権者は、指導改善研修を実施するに当たり、指導改善研修を受ける者の能力、適性等に応じて、その者ごとに指導改善研修に関する計画書を作成しなければならない。
4  任命権者は、指導改善研修の終了時において、指導改善研修を受けた者の児童等に対する指導の改善の程度に関する認定を行わなければならない。
5  任命権者は、第一項及び前項の認定に当たつては、教育委員会規則で定めるところにより、教育学、医学、心理学その他の児童等に対する指導に関する専門的知識を有する者及び当該任命権者の属する都道府県又は市町村の区域内に居住する保護者(親権を行う者及び未成年後見人をいう。)である者の意見を聴かなければならない。
6  前項に定めるもののほか、事実の確認の方法その他第一項及び第四項の認定の手続に関し必要な事項は、教育委員会規則で定めるものとする。
7  前各項に規定するもののほか、指導改善研修の実施に関し必要な事項は、政令で定める。

第25条の3(指導改善研修後の措置)
任命権者は、前条第四項の認定において指導の改善が不十分でなお児童等に対する指導を適切に行うことができないと認める教諭等に対して、免職その他の必要な措置を講ずるものとする。


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