学校文化と教師
井門 正美 編著
A5判 358ページ 並製
定価 2800円+税
ISBN978-4-921102-42-5 C3037
[発行所:NSK出版 発行者;新藤智]
目 次
第1 部 「学校文化と法」
第1章 自己組織性( 自省作用) のある学校教育の創造
第2章 学校、教師と社会
第3章 「文化」としての学校といじめ
第4章 社会規範といじめ
第5章 「役割体験学習論」によるいじめ問題の追究
< 資料>模擬学年会議・職員会議及び模擬裁判シナリオキット
第2部「いじめ問題のさらなる追究」
第1章 いじめと臨床心理学
第2章 いじめ加害者のケアとストレスマネジメント教育
第3章 「いじめ」と発達障害填
第4章 「いじめ」問題における「いのちの大切さ」の論点
第5章 非行への対応
『学校文化と教師』の発刊に当たって
井門 正美
本書は、「学校文化と法」と「いじめ問題の更なる追究」という2部で構成されている。前者は、文部科学省科学研究費補助金新学術領域研究「法と人間科学」「法意識と教育グループ」( 法教育班) の研究成果(2014 年3 月) であり、後者は、前者の研究成果の更なる追究で、筆者が何人かの論者にご執筆いただいた論稿を掲載している。
本書では、「いじめ問題」を中心に学校文化と教師について追究している。学校文化は独自の文化を持っており、その文化の中で職務を遂行している教師は、ややもすればその文化に慣れ親しんでしまい、その独自性、もしくは特殊性には気付かなくなってしまう。学校や教師がその文化で暗黙の前提となっている価値や行動様式に対して無自覚・無反省になり、児童・生徒やその保護者にも強要すると、そのために起こる問題も多い。例えば、中等教育で見られる事例だが、学校が生徒に提出させる「地毛証明書」というものがある。茶髪にしたり、パーマをかけたりする生徒を出さないために、学校が保護者に書かせて提出させる書類である。髪の毛の色は「黒」で「直毛」ということを前提として、「黒で直毛」以外の髪の毛については、地毛であっても保護者からの証明書がなければ認めないというものである。学校の中には、生徒の地毛である茶色い髪を黒に色染めさせるというケースさえある。人権の尊重、個性や多様性がこれだけ叫ばれている中で、このような指導は時代の流れに逆行しているとしか言いようがない。
第1部で私が1980 年代後半、中学校教師として経験した頭髪指導( 男子丸刈り・女子短髪) についてその問題点を指摘しているが、それから30 年も経った今日でも、ほとんど変わることのない指導を学校や教師はしている。大阪地方裁判所で現在審理されている「頭髪の黒染め強要」に関する訴訟は、大阪府立高校の女子生徒が、生まれつき茶色の髪を学校から黒く染めるよう強要され不登校になったとして、大阪府に約220 万円の賠償を求めた訴訟である。審理が始まったばかりではあるが、人権から考えても、また、グローバル化が進む中で多様な人々が共生する社会状況の中で、学校のこうした生徒指導は適切なのか。学校や教師は自身の文化や日常にどっぷり浸っているのではなく、他の文化や国々との比較、人権や理想・理念等を踏まえて適切に判断をしなければならない。裁判には、適切な審理と判決がなされることを期待したい。
本書は、学校や教師の自己組織性や自省作用を「いじめ問題」を中心に考えていこうとするものである。読者の方々から本書の論稿に対しての様々な意見をいただき、学校や教師の自己組織性や自省作用を促進するための建設的なアイディアをお寄せいただければ幸いである。
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