ビール・ウイスキー産業の革新者たち

 ビール・ウイスキー産業の革新者たち

 

 森田 克徳 著

  NHK朝の連続テレビ小説『マッサン』のモデル「竹鶴政孝」をはじめ、
ビール・ウイスキー界の創業者が勢ぞろい!


A5判 170ページ 並製
定価 3800円+税

ISBN4-921102-20-3 C3034

目  次

はしがき

序章 本書の課題
第2章 「東洋のビール王」を目指した馬越恭平の経営行動
第3章 明治屋・磯野長蔵の決断―麒麟麦酒への一手販売権の返還とビール営業マンの移籍
第4章 国産ウイスキーの夢を果たした鳥井信治郎の経営行動
第5章 国産ウイスキーの夢にかけた竹鶴政孝の経営行動
第6章 大日本麦酒の分割と朝日麦酒・山本為三郎の経営行動
第7章 第二次大戦後の麒麟麦酒・磯野長蔵の経営行動
第8章 洋酒ブームとビール事業への再進出―佐治敬三の経営行動
第9章 アサヒビールの再建―樋口廣太郎の経営行動
第10章 「スーパードライ」の活性化―瀬戸雄三の経営行動
第11章 発泡酒「麒麟淡麗〈生〉」への戦略転換―佐藤安弘の経営行動
終章 革新的企業家活動の展開


はしがき
  本書の課題は2つある。第1に,わが国においてビールがどのようにしてつくられ,販売され,その後,いかにして今日のような大きな産業に発展していったのか,その生成・発展・変革の経緯を,120年ほどのスパンで,幾多の試練に革新的に挑もうとした企業家の活動を中心に描くことである。そして第2にそのビールの歴史と深くかかわっているウイスキーにおける産業としての90年の苦難の足跡を,同様な視点で企業家活動を基軸に著わすことである。これまで,こうした観点によってビール・ウイスキー産業の事例を長期的なスパンで通史的に著わした書物はみられない。そこに意義を見出し,著者自身も挑もうとしたのである。最初に麒麟麦酒にかんする論文を書いてから10年近くがたった。この間,資料の収集に努めたが,幸いにも採り上げた全社から貴重な史料や助言をいただくことができた。それなくして,本書を著わすことは出来なかったであろう。
 本書で用いたアプローチは,「経営史的アプローチ」である。ここでの「経営史的アプローチ」は,複雑に影響しあう「外部環境」の下で,「だれが何を志向し,どのような意図・目的でいつ,どこで,何をいかにして行ない,どのような成果を得たか,そしてそののちにいかなる影響を及ぼしたか」を,定量的データと定性的資料を用いて補完することにより,長期的スパンで明示・検討するものである 。ただし,本章で用いた定量的データは,けして多いとはいえない。時系列的にみると,時代をさかのぼればのぼるほど,定量的データは少なくなり,定性的資料に頼らざるを得ない部分が多くなっている。また,少ないながら示したデータも概算値である。定量的データの不足という点は,否めないけれども,今後も史料の収集に意をそそいで研究を続けることでお許しいただきたい。



第5章 ─抜粋─
 1894年,竹鶴政孝は広島県竹原町で,父敬次郎,母チョウの三男として生まれた。家業は代々続いた造り酒屋であった。2人の兄は別の道を歩んだことから,三男の政孝が継がざるを得なくなった。
 竹鶴は,清酒造りの技能を修得すべく大阪高等工業〔のちの大阪大学)の醸造科に進んだ。当時,わが国で醸造学を学ぶことができたのは同校だけであった。竹鶴は進学後,柔道の稽古に励むとともに,清酒の醸造学を勉強するかたわら洋酒の世界に興味を覚えた。そしてその願いは日増しに強くなり,卒業してから家業の日本酒の仕込みがはじまるまでの半年だけでも,洋酒造りの現場で実習をしてみたいと願った 。
(中略)
 摂津酒造の阿部喜兵衛社長は,竹鶴の熱意に感心し,1916年,かくして摂津酒造への入社を竹鶴は認められた 。竹鶴の必死の思いが引き寄せた大きな転機であった。  
(中略)
 そのような折りに出会ったのが,のちに伴侶となったジェシー・ロベールタ・カウン〔ニックネーム:リタ〕であった。グラスゴー大学の学友エラ・カウンの弟に得意の柔道を教えたのがきっかけで,エラの姉のリタと知り合うこととなった。そしてその後,竹鶴はリタと親しく交際するようになり,結婚を決意した。当初,その結婚にかんし難色を示していたリタの両親は,竹鶴の熱意により結婚を認めところとなった。



編著者プロフィール

森田 克徳

(もりた かつのり)
流通企業研究所 代表
『争覇の経営戦略 製菓産業史』〔慶應義塾大学出版会,2000年〕
『現代商業の機能と革新事例』〔多賀出版,2004年〕
『争覇の流通イノベーション ダイエー・イトーヨーカ堂・セブン‐イレブン・ジャパンの比較行動分析』〔慶應義塾大学出版会,2004年〕(日本流通学会第10回学会賞)
『日本マーケティング史 生成・進展・変革の軌跡』〔慶應義塾大学出版会,2007年〕(経営行動科学学会第7回学会賞)

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